一口で「デザイナー」と言ってもさまざまなタイプに別れます。
今回注目した3人は、自らの確固たるスタイルを長年、微動だにせず貫いた孤高のクリエイターたち。マルタン・マルジェラ、ドリス・ヴァン・ノッテン、アズディン・アライア。
残念ながらそのうち2人の新作は今、目にすることはできませんが、時代を超越して残るであろう彼らが生み出した作品の偉大さに敬意を表しつつ、色褪せることないクリエイティブな刺激を、私的な思い出と共に、本を通じてご紹介いたします。
パリで回顧展が開催中の“異端の王道”マルタン・マルジェラ。
パリのガリエラ美術館で開催されている展覧会は、マルタン・マルジェラのデビューである1989年から20周年となる2009年までのコレクションが年代順に展示されています。
マルジェラ本人が2008年にメゾンを去ったとされているので、それらは彼自身が手がけた20年間の創作の軌跡と考えていいでしょう。
展示企画には本人も参加していたという話も。パリコレの最終日に私も展覧会へ駆けつけたのですが、忘れていたディテールやその時感じた「思い」が次から次へと想起され、素敵な胸騒ぎに浸ってしまいました。
マルジェラがデビューした時代と、私自身がファッション編集の仕事に夢中になり始めたのが同時期だったため、自身が感じていた反骨的なパッションやファッションに託したロマンティックな自己イメージの投影など、若き編集者がマルジェラというブランドに求め、支えられたものがいかに大きかったことか......。
はじめてマルタン・マルジェラのパリのショールームを訪れた際、マルタン自身がコレクションの説明をしてくれた体験は密かな私の宝物です。
190cmは有にありそうな長身で、ブランドのトレードマークである白衣を着た彼の穏やかな微笑みと知的な語り口は忘れることができません。
この本は展覧会の図録としてガリエラで販売されていたフランス語バージョンですが、英語版も今年の10月に発売予定だそう。
現在のモード界を牽引する多くのデザイナーがどれだけマルジェラから多大な影響を受け、今のトレンドの驚くほど多くが彼の創作の革新性を引き継いで生まれたものなのかを、その目で確認してみてください。
『Martin Margiela: The Women's Collections 1989-2009』
アレキサンドル・サムソン著
(リッゾーリ社)
※英語版は2018年10月23日に出版
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SYLVIE VINTAGE
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